アンドラは、バルセロナからほど近い小さな国。ペレネー山脈のど真ん中にあるので、国中が過激なトライアルフィールド。トライアルマシンを走らせれば、どこでも世界のトップライダーのかっこうの練習場となる。 世界選手権も残り2戦というところで迎えたアンドラ大会。藤波貴久とアダム・ラガのチャンピオン争いもし烈だが、それぞれのライダーが、それぞれの来シーズンを見すえた計画を始めるのもこの時期。トップライダーから下位のライダー、またジュニアやユースのライダーも、練習に余念がない。 今回の練習場は、本番の世界選手権では最終セクションを含めたグループ。会場の中では、標高の低い部類に属する。この練習場での結果が、そのまま大会に結びつくわけではなさそうだ。それでもライダーはみな真剣に練習を繰り返している。 「練習は、実はただの練習ではない」 と、藤波貴久は言う。練習から、試合は始まっている。トップライダーにとって、練習とはなにか。全日本ライダーにとって、またはサンデーライダーにとって、練習とはなにかを考える、ひとつの材料となるかもしれない。 さて今回の練習の目玉は、点在する岩をポンポンと越えていくダニエル走法。といっても、ただのダニエルではない。この人たちの手にかかると、すでにフロントが地面に落ちないのは当然で、そのうえ、岩の上で自由自在に向きを変え、フロントが高い位置からだんだんと落ちてくるその勢いさえも、逆に次のアクションに利用しているような印象さえ受ける。時代はどんどん進化している。トップライダーもまた、お互いに刺激しあいながら、少しでも先進のテクニックをマスターしようと必死。世界最先端の現場は、まさに世界選手権にあり。しかも、大会前日の、練習日にこそ存在する。 ◎47分 ◎JANコード/4560187780370